10月9日にご紹介した栗久のおひつを制作していらっしゃる、大館曲げわっぱ伝統工芸士、栗盛俊二先生にお話を伺いました。4回に分けてお届けいたします。1回目の今日は、おひつ誕生についてのお話です。
初めて栗盛先生がおひつを販売したのは、約20年前、とある百貨店の東北物産展でした。結果は好評で1年後、再び物産展に出店した際、栗盛先生の目に留まったのは、お客様が持参したおひつの隅が、真っ黒になってしまっている様子でした。
本来、木の道具とは、余分な水分を取るためのもの。「おひつにご飯を移し、水分を取り、居間におひつを運んでからお茶碗に盛り付ける」という習慣のある人は減り、電気炊飯器の時代において、白木の商品の使い方を知らない世代が増えていたのです。
そこで栗盛先生が取り掛かったのは、「使い方を知らなかった人にとっても使いやすく、商品状態も維持できる商品」の開発でした。「隅丸加工」というその加工は、ダムのようにアール状に削り、さらにリングの部品を作ってはめ込んだ加工で、これにより「ごはんをすくいやすく、使った後は洗いやすい」おひつが誕生したのです。
ここで、白木の商品のお手入れ方法、「湯切り」のやり方を簡単にご紹介します。
①熱めのお湯でこびりついたごはんをふやかし、木目にそって洗う
② やけどに注意しながら全体に再度お湯をかけ、木の中に含んだ水分を、水蒸気で取り除く
③残った水気をふき取り、上に向けておく
水分を取るためには伏せておきたくなってしまいがちですが、必ず上に向けて置いておくのがポイントです。
時代が変わり、習慣とされていたことが廃れていくなか、昔からの知恵を伝えるためには、使いやすい道具が必要だという栗盛先生のお話が印象的でした。
次回は、商品のバリエーションについてのお話をお届けします。
■おひつ 浅型3合(栗久):税込55,000円
□ 西武池袋本店7階(北B2) くらしのぎふと