備前焼伝統工芸士でいらっしゃる、吉延美山先生にお話しを伺いましたので、4回にわたってインタビュー内容をお届けいたします。
1回目の今日は、「土と炎の芸術」ともいわれる備前焼の特徴についてです。1つとして同じものにはならないという備前焼は、出来上がりをどうイメージして仕上げていくのか、吉延先生に伺いました。
備前焼はガス、電気窯でも作陶は可能ですが、今回は薪で炊き上げ、備前土を大半使用している焼き物のお話です。
作陶の過程で生じる不測の変化や、作品の見どころを「景色」と言います。吉延先生は、以下の4つの景色を踏まえ、イメージを固めていくそうです。
①:薪を炊き、その炎で焼き上げます。炎は酸素が足りた先端から不十分な中心部まで、千差万別の景色となります。
②:薪が燃えると燠(おき)が生じ、燠に埋もれた灰被りの景色となります。この燠の被り具合で状態が変化していきます。
③:高温でガラス化し、ゴマを振りかけたような状態を「胡麻」といいます。胡麻作品は松割木の灰が作品に付着し、高温で溶けた景色から作られます。灰の量で状態が変化します。
④:緋襷(ひだすき)に代表されるように、直接炎が当たらなく、藁をまいた景色で、鞘という容器の中へ入れて焼くと、①の炎が千差万別の色を発色してくれます。容器に入れるため、酸素が少ない状態になります。
①~④を踏まえ、作品ごとにどんな景色が良いかをイメージして、窯づめの作業を行っています。
しかし、雨が降ると温度が下がってしまうなど、自然状態にも左右され、予測をすることが難しいそうです。「一歩一歩、経験をもとに新たな挑戦をして、だんだんと進化させていく」という、吉延先生の力強いお言葉がとても印象的でした。
次回は、吉延先生がいらっしゃる丸山窯独自の作陶方法についてお届けいたします。