いつもと違う“空気”に誘われるよう、6階アート・ギャラリーのエントランスへ。
ライムグリーン、ピンク、イエロー・・・壁にかかる、鮮やかな色彩の作品の数々。
空気が重なり、包み込むような、心地よい空間。そして、やさしく微笑みながら迎えてくださるのは・・・。
4月26日(火)午後4時まで開催中の「Chiho Yonemushi texture of air」展示会場で、日本画家 米蒸千穂さんにお話を伺いました。
―米蒸さんの作品は、いわゆる“ステレオタイプの日本画”の概念やイメージを払拭するような新鮮な印象を受けましたが・・・。
日本画としての技法・画材を使った作品ですが、とりあげるモチーフに新鮮さを感じるのではないでしょうか。身の回りの風景のもつライブ感を描きたいと思っています。
―美しい色はどのように生まれるのでしょうか?
水干(すいひ)絵具とアクリル絵具を使います。水干(すいひ)絵具というのは、貝殻から作られた顔料の一種、胡粉に着色した日本画絵具。発色がよく、“ほんわり”とした柔らかい色が表現できます。
ーちなみに、米蒸さんがお好きな色は?
個人的には、ブルー、青系が好きですね。
ー「遠くになるにつれて、霞んで見えなくなっていく風景」、その表現に込められた意図やメッセージは?
スキー場で“ホワイトアウト”に遭遇した自身の体験が原点ともいえるでしょうか。
雪や雲で、視界が白一色になり、方向も高度も地形の起伏も感じない、まるで時空さえも超えたような、いままで見たことのない空間。
何回も来ているはずの場所なのに・・・、慣れ親しんだ場所なのに・・・。
果たして、ホワイトアウト前の風景は、どんな景色だったのか・・・よく思い出せない、ぼんやりとして認識がされていない。
この「霞む認識」がリアルであり、ライブなのです。
遠くなるにつれ、霞んで見えなくなっていく風景。その向こう側を感じて欲しいと。
―米蒸さんが描く横断歩道、交差点など街中の風景も「霞む認識」でしょうか?
スクランブル交差点は私にとって、とても興味深い空間です。数十秒の間に見知らぬ人々が行き交いそして別れていく。
いつも歩いている歩道、人々が行き交う交差点…あたりまえの日常の風景。
でも、歩道沿いに並ぶ店舗や周りのビルの景色は、漠然としている。
見ているはずなのに、見ていない。
私たちの認識とは、そのくらい。それがリアル。
ただ、その時その場に漂う空気の質感だけは記憶にとどまっているのです。
そして、霞む向こう側には、それぞれの人の行き先に幸せがありますようにと。
―作品のモチーフ選びには、何かこだわりはあるのでしょうか?
作品には、木立ち、睡蓮の池、遠浅の海辺などの自然の風景のモチーフもあります。
街のモチーフ同様に「行ってきた、あの場所」。
街中も自然も、私にとっては、フラットなモチーフなのです。
ー丁寧に均等に色を薄く重ねフラットな画面。制作時間も要すると思いますが、テーマを決めて描き出してからは、筆を止めることなく、迷わずに完成に向かうものなのですか?
時には、制作を進めながら、途中で切り替えて、いちからテーマを変えていくこともあります。
ー今回のイケセイでの展示販売会「Chiho Yonemushi~texture of air~」も、あと本日を残すところとなりました。何かメッセージをいただけますか?
タイトルにある「texture of air」。作品に表現した、空気の質感を感じてほしいと思います。
また、今回、「池袋」の街をテーマにした作品も展示しています。
今回、米蒸さんとお会いする機会をいただいたmal。
米蒸さんご自身も、作品のもつイメージそのままに、透明感、まわりを包み込むような世界観を放つ、すてきな女性。
慣れ親しんでいる何気ない日常を、非日常的に表現するアーティスト米蒸千穂さんの世界。時間も空間も越え、自分の価値観だけをもって想像する楽しみを感じてみてください。
[トップの画像]
大作「交差点の向こう」に並んで。クリアなライムグリーンが印象的。
■Chiho Yonemushi~texture of air~
■4月26日(火)午後4時まで
■6階(中央B7)=アート・ギャラリー
■作品についてのお問い合わせ:03(5949)5348〈直通電話〉
※会期終了日以降の米蒸千穂さんの作品についてのお問合わせもこちらまで。
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